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《ヴァイキングけの祈祷》 【呪文】【歴史:カロリング王朝】


 ノルマン人(ヴァイキング)からの御加護を神にねがう祈祷*1

 8世紀末にブリテン島ではじめてヴァイキング略奪が行われたのをかわきりに、 ヨーロッパ津々浦々の教会・修道院で、どうか我々が略奪されませんように、との願いをこめて、
 「ノルマン人の猛威よりわれらを解放したまえ、主よ」
A furore Normannorum libera nos, Domine
という文句が、「ヴァイキング除けの祈祷」として唱えられたと、俗に伝わるそうである。

 しかしながら、そうした祈祷文を記した文献・断片、文句が刻んだ遺物などはじっさいには残っていない。
 もっともそれに近い産物は、九世紀、キリスト教化したフランスで歌われていた聖歌である。

 この聖歌は、シャルル大帝の息子、 《シャルル禿頭王の交唱聖歌集》*2 («antiphonaire de Charles le chauve») (870 年頃)に収録される。
 そもそも聖コルネイユ・ド・コンピエーニュ修道院 Abbaye Saint-Corneille de Compiègne が所蔵してい歌集だったが、その後フランス国立図書館に移転される(<Ms. Latin 17436>写本として保管)。

 交唱聖歌集とは、むろん唱歌コーラス集である。 しかもこの文献は、いわば楽譜つきであるため、資料としては非常に貴重なものである。
 ただただ歌詞うたいもんくを並べただけではなく、 音階の高低をしめす音符のような記号が、歌詞の上につけられていることが、下に掲載した画像からおわかりかと思う。

—Else Rosenthal, David M. Wilson 編
From Viking to Crusader
《シャルル2世(禿頭王)の交唱聖歌集》、第24葉、ヴァイキングからの加護をねがう聖歌。 *3

Summa pia gratia nostra conservando corpora et custodita, de gente fera Normannica nos libera, quæ nostra vastat, Deus, regna. Senum jugulat et juvenum ac virginium puerorum quoque catervam.
Repelle, precamur, cuncta a nobis mala. Converte rogamus, Domine supplices nos ad te rex gloriæ es qui vera pax, salus pia, spes et firma. Dona nobis pacem atque concordiam. Lagire nota spem integram, fidem simul veram, karitatem continuam concede nobis et perfectam. Sanctorum precibus nos adjuvemur ad hæc impetranda, de quorum passione
g[r]atulamur modo gloriosa. Sit laus, pax et gloria Trinitati quam maxima cuncta per sæcula. Amen.
—交唱聖歌のラテン語テキスト*4
もっともたる慈悲を憐れみたまえ、たもちてまもりたまえ、われらが生身からだを。 わが国を荒らしまくる野蛮なノルマン人の一族うからより解放ときはなちたまえ。 老いも若きも喉元を切り裂かれようぞ、乙女も童子も、大衆もまた。 邪悪よこしまなるをしりぞけたまえ、われらこぞりて冀うこいねが。 支配の王国をもたらせよと、我ら跪拝ひざまずきて願う、 光栄はえあるおおきみに ― 真正まことなる 平和と健全、希望と力を我らになぐさむその人に。我らに平和を与うべし、さらには調和をも。 [そして]いささかもくことなき希望を授けたまい、同時おなじくして、 真正まことなる信仰も; 続きながらえる慈愛をおゆずりあそばし、それらを成就せしめ。 我らが祈願を祝福し、これらの達成をかなわしめ。 我らが栄々はえばえしいほどに喜悦すること がありうるように。賛辞たる平和と栄華、衆生ひとびとにとって、すべからく、いと偉大におわす三位一体トリニタスにおいて。アーメン。
― 私訳*4a, *4b




*1 参照: Viking Answer Lady サイト(英文)"Origin of the phrase, "A furore Normannorum libera nos, Domine"。―キリスト教圏では、ヴァイキング侵寇をおそれ「ノルマン人の猛威よりわれらを解放したまえ、主よ」という文句が唱えられたと 俗に伝わるが、それを実証する文献はとぼしい、しかしそれとよく似た文句ならば、この《シャルル禿頭王の交唱聖歌集》につたわる祈祷がある、と説いている。

*2 英文では "antiphonary" または "antiphonal" や "antiphoner" と記す。

*3 画像元: Else Rosenthal, David M. Wilson ed., 『From Viking to Crusader: The Scandinavians and Europe 800-1200』 (New York, Rizzoli:1992年) p.80, cat. no. 351. 北欧人関連の文化遺物の写真資料が豊富な本である。

*4 Delisle, Léopold, 1826-1910. 『Litterature latine & histoire du moyen age』 1890年, 17f; ラテン語テキストを書写。説明文はフランス語。

*4a Rosenthal & Wilson (前出)は、この祈祷文の一部を載せているが(出典は Delisle と記される) 彼らによる英訳は: "Grant us freedom, Lord, from the wild Norman people who lay waste our realms"。

*4b Viking Answer Lady (前出) もやはり二行ばかりを Magnus Magnusson 著 『Vikings!』 (New York: E.P. Dutton. 1980年)より引用しており、 その英訳は次のとおり: "Our supreme and holy Grace, protecting us and ours, deliver us, God, from the savage race of Northmen which lays waste our realms."


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