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第XXIV章 Page 1 セイズと呼ばれる魔法をもってすれば、術者は嵐やさまざまな災害を呼びさまし、 動物に姿を変え、きたる出来事を予言することができたと信じられていた。 この術は、ほとんど危害を加えるために用いられたようで、祈祷(ガルド)よりもはるかに唾棄すべき行為 とみなされていた。 その起源は女神フレイヤに帰すとされ、たいてい魔女(seiðkona [単数形]、 seiðkonur [複数形])と呼ばれる 女性たちによって実践されたらしい。 異教の時代において、このセイズがいかに多くの者らから忌み嫌われていたかは、 ハラルド美髪王が、その王子ラグンヴァルド・レッティルベイン をセイズ魔術にたずさわったかどで起訴し、死刑宣告したことからも窺える。 (6) 古代のサガの中には、上記のどちらの大分類にもはっきりとはふるい分けされずに、 言及されている魔法の例も数多いが、多かれ少なかれ関連はしていたに違いない。 そうした魔法の最もたるもの例をここに挙げてみよう。 幻術 (sjónhverfingar = sjón 「視覚」 + hverfa 「ひねる」)は、 魔術でもって、見る者の目を見えなくし、物体をその実体とはまったく違うものに見せかけることである。 古いサガにおいて、この種の魔法は、術者が追われる身の者を追っ手からかくまったり、 敵を怖気させたりするのに用いられた。 そうした例だと、追跡の手の者は、追っている人物を目前にしているはずが、 そこには動物や、棺おけや、その他の動物・無生物しか見えていなかった、と述べられている。 一方では、追いつめたはずの人間のもとに多勢の援軍がかけつけたり、そこには牛や羊の群しか いないような錯覚を起こしたりもする。 術者はまた、第三者ではなく、自分自身を守るためにも、このまやかしの術をもちいられるとされた。 だがもし追っ手の者が、獲物の代わりに見えていた物体を破壊するか、代わりの動物を殺すか すれば、またたくまに幻は晴れ、元どおりの姿で死んで横たわる逃亡者を目にしたという。 しかし一部には、生まれもって強い耐力がそなわっていて、この種のまやかしにはかからない者も いると信じられていた。 (7) サガの中でしばしば言及され、上記の幻術と関わりの大きいものに、 透明化/姿隠しの術がある。これは、術者が自分または任意の人間を、他人の目に見えなくする術である。 その行為は、自分あるいは他者のための「隠れ兜を作った」(gera huliðs-hjálm)と表現されることがある。 また、こうした透明化は、一種の魔法の粉(外見は灰に似る)によってもたらせられる、とも伝えられることがあった。 実際、変身(とくに動物の姿に)ということが[この世に]可能であると、 ごく一般的に信じられていた。変身は、他者にきたして、これに危害をもたらそうとする場合もあった。 魔法にたけたフヴィータ女王については、こう語られている− 女王は、継子の息子に愛を拒絶され、憎悪のあまり狼皮の手套のひとさすりで、熊に変えてしまった (8)、と。 あるいは、術者がおのれとその姿を纏う場合は、そうした魔法の形態をとることで、遠離な場所にも、 やすやすと速やかに移動できるとされていた。 この後者のタイプの変身術の例がもっとも多くみられるのは、サガのなかで、この術をもちいた交通手段の ことを《変身の旅》 hamför 、 《獣乗り》 gandreið 、あるいは、 《獣乗りの旅》 at renna göndum などと呼んでいる(9) 。 このとき、元の人間の体は、あたかも死んでいるか、魔法の眠りについたように横たわっており、 抜けた魂のみが鯨、あざらし、隼(ハヤブサ)、そのほか、憑代としてもっとも適した動物に宿り、魔法の旅にでてまるで別の地を放浪するのだとされていた。 そのとき、術者の名前を口にしたり、眠る身体を起こしたりしてはならない。もし、それを すれば魔法がとけ、魂は、もとの宿り場所に帰らざるをえなくなる。 もし、その姿になりすました皮膚 hamr 〔
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脚注
(1). フョルキュンギ fjölkyngi (フョルクニグ fjölkunnigr) は、語源が fjöld 「多数」、 fjöl 「多く、多数」 (独 viel) + kunna 「知る、できる」 で 、要するに多種多様な知識である。 つまりは、魔術そのもの、あるいは魔術の能力をさした。 ゴールニンガール görningar (単数形 ゲールニング görningr)は göra 「する、つくる」に由来し、 本来は行動・実行を意味するが、 転じて、すなわち魔法、魔術となる。 [Back] * Cleasby-Vigfusson 辞典を引くと、ゲルニングは görning で出ており(görningr は異綴り)、一次的な意味は「行為、行動」で、「魔法」としてもちいるときはかならず複数形 ("always pl., sorceries, witchcraft")と説明している。
(2). このたぐいの呪文はヴァルガルド valgalldr と称した。おそらく、 戦中に倒れた者(valr)にたいして、主に使用されたからだろう。 [Back] (3). 『エギルのサガ』 44章[Back] (4). 『エギルのサガ』 75章 [Back] (5). 『ラックサー谷の人びとのサガ』 37章 [Back] (6). スノーリ著「ハラルド美髪王のサガ」 36章 [Back] (7). 『ホルズのサガ』 、『『エイルビッギヤのサガ』ほか。 [Back] (8). 『ロルフ・クラキのサガ』 20章 [Back] (9). 《変身の旅》 [Back] (*)訂正:ここはかつて
(**) この skipta litum は、直訳だと「変わる+色を」の意味。
(10). そうしたことをしでかす女性への罰は、『ノルウェーの古法典』 I., p. 403 に確立されている。 [Back]
| という〕から身を守ってくれている。「剣は噛まず;まるでトナカイのコートに埃をたてただけのようであった。」
(14) オークニー伯爵のハラルド・ハーコンソンが死んだのは、自分の母と姉妹が、じつは異母兄弟パール伯爵に着せるためにこしらえた衣服を身にまとったせいだと書かれている。(15) 剣が魔性のものであることもある。合戦でそのような剣を使う者には必ず勝利がもたらされたし、そうした剣から受ける傷は、剣に付帯する「 フロフ・クラキ〔* デンマークの伝説的な英雄王〕の墳墓から取得されたが、女性の前では抜いてはならず、柄に陽の光をあててはならなかった、そうしないと、その特性がいくばくか失われるのである。 (16)
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脚注
(11). 『ヴァトン谷(みずうみ谷の人々のサガ)』[Vatnsdæla saga] S. 26; compare Gullþóris Saga. [Back] (12). 『ラックサー谷の人びとのサガ』第 38 章. [Back] (13). スノーリ『ヘイムスクリングラ』「聖オーラヴのサガ」第 34 章. [Back] (14). スノーリ『ヘイムスクリングラ』「聖オーラヴのサガ」第 204, 240 章 . [Back] (15). スノーリ『オークニーの人々のサガ』[Orkneyinga saga] p. 144. [Back] (16). 『ラックサー谷の人びとのサガ』第 57 章[Back] (*) 単数形は reitr 。「花壇やチェスの五目盤などで、正方形や区画が描線(しるし)されたもの」 (17). 、『フェロー諸島の人々のサガ』[Færeyínga] 第 40 章. [Back] (**) Keyser は誤って "Thorolf Skeggi" 「あごひげの」ソールオルヴとしているので、 訂正した。 (18). 『ヴァトン谷(みずうみ谷の人々のサガ)』第 28 章. [Back] (***) 上の文章では、hamför [単数形]として既出で、脚注で"journey in an assumed form"あり、《変身の旅》と訳した。こちらでは"magic flights in transformation"(《形態転換による魔法飛行》)と説明され、付記された北欧語が複数形になっている。
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