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Ormurin

Ormurin Langi.

音楽:
  フェロー諸島の伝統歌曲
編曲[バンド Týr]:
  Heri Joensen & Kári Streymoy
歌詞 [バラード番号=CCF 215]:
  Jens Christian Djurhuus (1773 -1853)

『長蛇号』

(フェロー語のバラード)
{Faroese text }

1. Viljið tær hoyra kvæði mítt,
viljð tær orðum
trúgva,
um hann Ólav Trygvason,
hagar skal ríman snúgva.

Niðurlag: ⇒
Glymur dansur í høll,
dans sláið ring
Glaðir ríða Noregs menn
til Hildar ting.

3. Knørrur varð gjørdur á Noregs landi,
gott var í honum evni:
sjúti alin og fýra til
var kjølurin millum stevni

8. Har kom maður oman
við sterkum boga í hendi:
Jallurin av Ringaríki
hann meg higar sendi. ”

10. “ Einar skalt tú nevna meg,
væl kann boga spenna,
Tambar eitur mín menski bogi,
ørvar drívur at renna. ”

11. “ Hoyr tú tað, tú ungi maður,
vilt tú við mær fara,
tú skalt vera mín ørvargarpur
Ormin at forsvara. ”

12. Gingu teir til strandar oman,
ríkir menn og reystir,
lunnar brustu og jørðin skalv:
teir drógu knørr úr neysti.

71. Einar spenti á triða sinni,
Ætlar jall at raka,
brast strongur av stáli stinna,
í boganum tókst at braka.

72. Allir hoyrdi strongin springa,
kongurin seg undrar:
“ Hvat er tað á mínum skipi,
sum ógvuliga dundrar ? ”

73. Svaraði Einar Tambarskelvir
kastar boga sín
“ Nú brast Noregi úr tínum hondum,
kongurin, harri mín ! ”

#
Nú skal lætta ljóðið av
eg kvøði ei longur á sinni
nú skal taka upp annan tátt
dreingir leggi í minnið




{和訳} *固有名はフェロー読みであるが、アイスランド読みも〔*〕に付記した。

1. 聞いてくれるか、俺の唄をヴィリ・テール・ホイラ・クヴェーア・ムイト
俺の語り、信じてくれるかヴィリ・テール・オラム・トリュグヴァ
オーラヴ・トリュグヴァソンについてのオン・ハン・オーラヴ・トリュグヴァソン
その唄はこんな繰り出しだヘヤ・スカル・ルイマン・スニュグヴァ

リフレーン: ⇒
騒がしい踊りが王堂にグリームル・ダンスル・イ・ヘドル
踊れよ、輪になれダンス・スライユ・リング
喜びいさんでノルウェー男らは駈けるグレイア・ルイア・ノーレグス・メン
ヒルドの集いへティル・ヒィルダール・ティング[* ヒルド=「戦う者」ヴァルキュリーの名。]
3. 長船クネローがノルウェーの地でこさえられた
たいした出来だったよ:
腕尺エルで計って七十と四、
竜骨の[舳先へさきから] ともまで。

8. 男が[山から]降りてきた、
強弓ごうきゅうひとつ手に:
「リンガルイチの伯爵ヤドルが、 [* フリンガリーキ のヤール]
ここに俺を遣わせた 」

10. 「アイナーと呼んでくれ、 [* エイナル]
弓をひきしぼるのが得意さ。
タンバール [* 「ひきしぼり」]と名づく、俺の雄雄しい弓、
これで矢を射ちまくるのが」

11. 「ちょいと聞け、若者、
余について旅をする気はないか?
わしの《矢の勇者》としてむかえよう、
「蛇」を守る役に。 [* 長蛇号のこと]

12. 者らは浜辺におりたった、
強く猛々しい男たち。
敷板は壊れ、大地は揺れる [* 浸水させる船をのせる板]
船は船渠から綱引きされた

71. アイナーは三度、弓を引いた、
伯爵を射るつもりで、
頑丈な鋼鉄の弦がちぎれた、
弓にかかったままちぎれたようだ
[* 敵方のエーリク伯の射手に撃たれたのだ。]
72. 皆共は弦がはじけるのを聞いた、
王は驚嘆して言った:
「なんだあれは、わしの船を
ひどくうならせるのは?」

73. それに答えてアイナー・タンバーシェリヴィル [* エイナル・サンバルスケルヴィル] みずからの弓をほうり、
「ノルウェーはもはや、閣下の手からちぎれ申した、
王閣下、わが君よ!」
[* 敗戦避けがたく、まもなくオーラヴは海に身を投ず]
#
では、この歌は、今しばしやめにして、
此度こたびはこれっきり語らないことに、
されば第二話を取り上げますので、
永らくお覚えにあずかりますよう。
[* ここだけ敬語でかみあわないが、古来伝統的なしめくくり文句がそのままもちいられていることを示す]
戦いの集いへ。「ヒルド」は「戦い」、「戦う者」も意味するので、その ここでは語頭が大文字かされているので、固有名詞扱いであり、察するにヒルドというヴァルキュリーの名であるだろう。これはエッダ詩「巫女の予言」等で挙げられるヴァルキュルの名である。また、別のエッダ詩「ブリュンヒルドの冥府への旅」では、ブリュンヒルドがかつてヴァルキュルだったころ、ヒルドと呼ばれたと述懐している。
 ヒルドはしかし、ごくありふれた名前でもある(たとえば、アッティラと最期を過ごした新婦ヒルディコの名もヒルディコといい、これは「花子ちゃん」ほどの意味である、と松谷健二 『東ゴート興亡史』p.59 にある)。
 たとえば、『詩の語法』49章でヘジンに連れられて逃げた王女もヒルドであった。この駆け落ちは、ヒャズニングの戦いの勃発となったが、「ヒルドの腕輪」はヒルドが、父親への和平交渉の見返りの品として差し出そうとした物品である。ところがこの場合の腕輪の贈物というのは、「受動的ホモセクシュアリティ」を示唆する比喩的名侮辱だったとする説もあるらしい。(とんだ脱線になったが)
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Origins / Links:
 上の歌詞は、フェロー出身のロックバンド、トゥイル Týr 〔* フェロー読みでチュールのこと〕 のアルバム How Far to Asgaard の挿入歌「Ormurin Langi」である。 このサイトに行けば、サンプルの mp3 サウンドファイルを無償ダウンロードできる。

 このバラードは、農家のイエンス・クリスチャン・デュルフースが19世紀に作詞したもので、 全部で 85 詩節あるが、全文はいくつかのサイトに掲載されている(次に挙げる TJATSI サイトにもある)。

 フェロー諸島から2006年に発行された10枚つづりの切手は、「長蛇号」(オームリン・ランギ号)のバラードを 題材にしたものである。これやその他北欧ネタのフォロー諸島発行切手については TJATSI (英文)に詳しいが、現時点では原文のみで英訳は掲載されていなかった。 切手の購入希望者はFaroese Post Office (英文)でもオンライン購入できる(JASカードも使えるようになっていた)。

漫画家あずみ椋の作品 「獅子の如く」にオーラブ王とその旗艦「長蛇号」がロマン化されている。 上で取り上げたエイナルの弓の破壊は、『ヘイムスクリングラ』のオーラブ・トリュグヴァッソン伝でのオーラヴ王の最期のあたりで読める。オンラインでは、Runsten さんによる「訳に似て非ずもの」であるサガの織物:ヘイムスクリングラをお読みになるとよいだろう。
 また、王の御座船「長蛇ちょうだ」にて「エーナール・タンバルスケルヴェ」がその弓を砕かれるシーンについては、寺田寅彦の随筆「春寒」でも紹介されていた。

リンク先などについて追っての説明などは、自作のフェロー関連リンク のページを参照されたし。