*1 スノーリの散文エッダ 『詩語法』第42章 (FJ 1907 版および Brodeur 訳) (=Guðni Jónsson 版第54章)。Anderson 英訳も参照。
*2
スノーリはここで、「召使女」を意味するambáttir
(ambát の複数形) を使っているが、成句(ケニング)としての
Fróða þýja meldr 「フロジの召使女たちの挽粉」は「黄金」
の比喩として Cleasby-Vigfusson 辞書に載っている。典拠は 『灰色外套のハラルドのサガ』Haralds saga gráfeldar で引かれる Eyvind Finnson 作のスカルド詩。
*3 このエピソードと「石臼の歌」は、場合によっては『詩エッダ』
に編入されることがある。
§ Maelstrom メールストロム
石臼の水没のあとにできた渦巻きというのは、おそらく北極圏内のノルウェー沖に出現するモスケンの メールストロム mælstrom*1のことであろう。
*1
Northern Lights route サイトに The maelstrom など英文解説や画像がアップされている。
特に、 Olaus Magnus の地図には、モスケンの渦巻きを含む
自然界の奇異のイラストや、海獣のイラストが載っている。その画は、別途複写してメールストロムサイトに掲載した。
§ Snorri Sturluson (1179 - 1241 年頃) Skaldskaparmál
じつはスノーリの『詩の語法』のなかでも、グローッティについて触れているくだりが別にある。
スネービェルン Snæbjörn のスカルド詩 *1の引用であるが、
文中で アムロージ Amlóði すなわち悩める王子 ハムレットに
ついて言及されているので、関心が集まっている。
以下、Brodeur による散文エッダ英訳などをもとに和訳した。
イズラエル・ゴランツ Gollanz が捜し求めて世に出した『Amloðe the Fool /Ambales 』 *2に、このスカルド詩の分析・翻訳が見えるので、それも付け加え、フィンヌル・ヨーンソン編の『詩の語法』引用詩の読み下しを併記した:
Sem Snæbjörn kvað:
"Hvatt kveð hræra Grotta
hergrimmastan skerja
út fyrir jarðar skauti
Eylúðrs níu brúðir,
þær er, lungs, fyrir laungu,
líð-meldr, skipa hlíðar
baugskerðir rístr barði
ból, Amlóða mólu."
Hér er kallat hafit Amlóða kvern.
— Prose Edda: Skaldskaparmál
[Gollancz, Israel 著 『Hamlet in Iceland』 xi]
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スネービェルンは、かく歌いし:
人伝うに、何がグロッティを動かすか、
大地の隅のはてにある、
いと群兇なる岩礁の、
島臼を九人の嫁が[動かす]
Of Grótti's Island-Flour-Bin
They who long the corny ale ground
Of Amlódí; the Giver
Of Rings now cuts with ship's beak
The Abiding-Place of boat-sides.
Here the sea is called Amlódi's Churn.
—Brodeur's trans., Prose Edda: Skaldskaparmál 25 ("periphrases for the sea")
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'Kveða ní brúðir eylúðrs hræra hvatt hergrimmastan skerja grotta út fyrir jarðar skauti, þær er fyrir löngu mólu Amlóða lið-meldr; baugskerðir rístr skipa hliðar ból lungs barði."
—Gollancz による散文読み改め
九人の岩礁の乙女ら(アィギルの娘=「波」)は、大地の向こうに、もっとも敵意ある島の
挽き臼(=「わき返る海」)を、大いなる力によりかき回す――はるか昔にハムレット
の挽き臼(=「海」)をひいたように――黄金の輪をはずす者(=「宝物の授与者であ
るよき支配者」)はかくして船の鋭い舳先で船の外衣(=「波」)を分け進むのである。
[ここでは海はハムレットの挽き臼と呼ばれている。]
— 伊藤 盡 「ハムレットの父の系譜と Anglo-Saxon Kingdom の王の系譜:神話と歴史文献学との狭間についての研究ノート」Colloquia 20(1999) pdf
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—Finnur Jónsson による散文読み改め
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*1 スノーリの散文エッダ 『詩語法』第25章 (FJ 1907 年版 ・ Brodeur 英訳); = 『詩語法』第34章 (Guðni Jónsson 1945年版);
*2
Gollancz, Israel, Hamlet in Iceland (London, 1898).
アイスランド語テキストと英訳。この話にまつわるバラード数点などや幽霊の話等も収録。
§ Asbjörnsen & Moe
ノルウェー民話にも魔法の石臼の話は残されていてアスビョルンセンとモーの民話集 *1にも挿入されている。
この民話と同じ物語は世界各国にあるということで、アールネとトムソンの分類法 (Arne-Thompson motif index) では "AT 565: The magic mill" の『昔話の型』とされている。
民俗学の大老の柳田國男(1865-1962年)の収集した『日本の昔話』 *2 にも、
「海の水はなぜ 鹹い」という一篇(岩手県の陸中上閉伊(かみへい)郡で採集したもの)があり、ノルウェー民話とそっくりである。
善良な弟が、森の小人に出会い、「麦饅頭」と引き換えに、右へまわすと好きなものが出、左に回すと止まる「石の挽き臼」を得るが、強欲な兄が奪って塩が出っ放しになり船が沈んでしまう。
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