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Fine-Guerre フィネ=ゲール 【フランス王伝説群】(非武勲詩のロマンス詩) 【ノンサイクルもの】【武器:剣】

Fine-Guerre (Michel 編 p.93; v.1833行 [訂正1834?])*1, (Buffom 編 [Flutre に拠る])*2, ? (Lowe 編。散文バージョン) [古仏];
[「戦争の終焉」]

 『すみれ物語』または『ヌヴェールのジェラール』において、 題名主人公のジェラール・ド・ヌヴェール Gérard de Neversが入手した剣。 通りすがった川上にそびえる城、ヴェルジー城の女城主アイグリーヌ Aiglineたちを 困らせる宿敵ガルラン Galeransを迎え撃つと宣言して、与えられた武具一式のうちのひとつ。 あくる日攻撃してきた宿敵を、ジェラールはみごとこの剣で倒し、町を救う。

 その剣には、以下のような過去、および名前の成立の事由があった:

 かつてバグダッド王には、サラミス(ギリシアの島)を統治する甥がいた。 この甥は容姿端麗だったが、王に憎まれており、戦いに乗じて命をおとさせてやろうと、 エスクラモール・ド・ボデールという相手と戦えと命ずる。そのとき甥に与えた剣は、 見かけこそ立派だが、鉛刃の役立たずの武器だった。小島での果し合い。 果たしてその贋剣は、すぎに真中から折れてしまう。 伯父の裏切りを知って震撼し、逃げ場を失くした甥は、川辺に言って、とりあえず石でも手にして 戦おうとするが、奇しくも右手を触れたところに、鋼鉄の剣が埋まっていた。 それを取り出し、気を持ち直して甥はエスクラモールを討った。 この一撃ゆえに、剣はフィネ=ゲール(つまり「戦争の終焉」)と名づけられたという。

 以上における剣の過去の説明は、Bach *4 による要約とおおよそ 合致している。ただ、この箇所のテキストと照合してみたところ、多少の齟齬が見つかった。 Bach は、ジェラールが小島の決闘の当事者だったと解しているようだが、誤りかと思う。

 さらには、Flutre は、『Table de Noms』において、この剣は「エスクラモールの剣」と説明し、 また、エスクラモール・ド・ボデールは、「バグダッド王の甥」としているので、 事実関係が真逆になっている。(Flutre は、Buffum 編本を使用している)
テクスト
*1 Michel, Francisque 編 Roman de la violette; ou, De Gerard de Nevers: en vers, du XIIIe siècle (Paris 1834) [books.google] | copy2 [IArchive]. 詩行の数え違いがある。 p.92 は、1829-1832行(計4行)だから、p.93 の筆頭行は1833行なはずなのに、 "(v.1832)"と表記されている。よって、剣名の登場行は、1833行にすべきか、1834行に訂正すべきかまよう。

*2 Buffum, Douglas Labaree, b. 1878. 編 Gerbert de Montreuil, Le roman de la violette ou de Gerart de Nevers Société des Anciens Textes français. (Paris, 1928)

*2a Buffum編のSATFシリーズ本は、未見なので、Flutre の『Table de Noms』の表記を転用した。

*3 Lawrence FH Lowe 編 Prose version of the Roman de la Violette (Elliot Monographs. vol. 22.).

*4 Bach, Volkmar, Die Angriffswaffen in den Altfranzösischen Artus- und Abenteure-Romanen, p.19, [Ausgaben und Abhandlungen aus dem Gebiete der Romanischen Philologie, veröffentlich von E. Stengel, LXX]. (Marburg: N.G. Elwert'sche Verlagsbuchhandlung 1887).

§ Romance de la Violette

§ メインストーリー (愛と貞淑の疑い)

 ときにルイ王(8世かもしれないが不明)が、ある復活祭(pasques p.6)の頃、 ノルマンディー州ポン=ド=ラルシュ Pont-de-l'Arche で開廷した。
 様々な招待客、とくに雅な女性たちが、ことこまかに紹介される。
 そこに、ある美男の紳士が、手に鳥をとまらせて現れた([damoiseau] qui sur son puing tint .j. oiseau, p.11)。 皆の注目を独り占めにするのは、主人公の伯爵ジェラール・ド・ヌヴェールであった (Li vasaus ot Gérars à non p.11)。 美声で知られるジェラールは、ポワティエの城主から歌を催促され、 調子にのって、自分の愛する女性、ウリオー/オリオー(Oriaus p.19, Oriaut p.21, Euriaut), p.43 等)の絶対なる貞淑を自慢する。

 そこにつけこもうとしたのが、ガヌロン並みに性格の悪いリシアール・ド・フォレ伯爵 (Lisiart (Lisiars), quens de Forois (Forest, Forez) p.16 等) だった。 リシアールは、8日間のうちにその女をたぶらかして口説いて見せる、と言って、 お互いの領地を賭けることを提案する。
 リシアール伯は、遍歴の信者に変装するなどして、甘言でウリオーを誘うが、 まったく相手にされず、たくみにいなされてしまう。

 だが、うまいことに、この婦人の使用人で、醜く色黒なゴノレー Gondrée (p.27)という悪女をとりこむ。 この女は、盗賊ゴンタクル Gontacle の娘で、 魔術にも通じていた。ウリオー婦人をここまで育て上げてきたにも関わらず、 リシアートがちらつかせたローブ服や馬 (Robes et chevals p.30)などの 礼品につられて、婦人を裏切ることに合意したのである。
 悪女は、女主人に対し、なぜお嬢様は一目で絶対にはだけて見せないのですか、と訊き、 その理由は、愛する人以外、絶対知られてはならない二人だけの仲の秘密の痣が体にあるからだ、 ということを知る。
 悪女は、そして彼女が湯浴みをしている部屋の戸にのぞき穴をあけ、 ウリオー婦人の右胸には、ちょうどスミレの花のような紫の黒子があることをつきとめた。 (sor sa destre mamiele / Une violete nouviele p.34) ついで、リシアール伯を目覚まして連れてきて、自分の目で覗き穴からのぞいてもらった。 (フォレの伯爵が覗きをするシーンの写本絵が、 Michel 編の p.34 の向かいの挿絵になっている。)

 こうして得た事実を武器に、王が開廷がしているメルン Melun (Meléun, p.37)に戻った リシアール伯は、婦人を口説いたとうその主張をする。 その真偽を吟味する審議がおこなわれることになり、 ジェラールは甥のジョフロワ Geoffroi (Joiffroi, p.41) を遣わして、ウリオー婦人を召還する。婦人は浮き浮きとして旅する身支度を 整える。白色の乗馬に鞍を載せ、すばらしいローブを着、 ロランが美しきオードに与えたというヒヤシンス石・ルビー・エメラルドの嵌められた ベルト (jagonse=jacinth, p.44)を身につけた。

 審議がはじまり、リシアール伯は、婦人のスミレ鉢形の黒子のことを知っているということを証拠だてに、 彼女と睦まじく思いのままにした、とうその主張をする。 二人だけしか知らないはずの秘密をつきつけられ、ジェラールは賭けの敗北をみとめ、 ヌヴェールの領地は、王の采配でリシアールに譲渡されてしまう。

両親たちから、不義の彼女を罰するように言い渡されたジェラールは、 自分なりの方法で始末をつけると宣言し、 彼女を閑散とした森に連れて行き、斬り捨てようとする。 だが、そのとき、1アルパンほどの面積がある火竜がやってきて、(serpent.. près de li .j. arpent p.55). 彼女が声を立てて忠告する。ジェラールは、ふりむいて竜と戦い、 斬首してこの怪物を倒す。忠告してくれた彼女を殺める気持ちは、もうなくなっていたが、 神に罰を決めてもらおうと、彼女を森に置き去りにする。 彼女は、メッツ市 Metz (Miès p.58)にたどりつき、 その公爵の使用人になる。

 歌うことしか慰めのなくなったジェラールは、吟遊詩人に化け、 ヌヴェールの市へやってくる(p.70向かいに挿絵)。 そこで、悪女(Gondrée, p.74)と悪伯爵の会話を立ち聞きし、 自分がだまされていたことを知る。 * ジェラールは悔いいり、ブルゴーニュ、パリ、ベルギーのニヴェルなどを転々として彼女を探し回る。 そうして、川の上にそびえる城にやってくるが、そこはのちにヴェルジー城 Vergy (Vergi)と判明する。

[その他、諸国の冒険がつづき、4000行ほどにおよぶ]

 ジェラールは、メッツにやってきて、大衆の前で大きなかがり火が焚かれ、 うらわかき女性が、人殺しの罪で焚刑にされようとしている場面に遭遇する。 その女性こそ愛するウリオーだった。ウリオーを讒訴したのはメリアティルスMéliatirs (Meliatir p.257 v.5462) という男だが、じつはこいつが真犯人だった。ジェラールは、彼女の無実をはらす勇士として、 讒人と戦って相手をねじ伏せ、罪を自白させる。

よりを戻した二人は、今度はフランス王に、リシアールの悪事を告訴する。 その真偽は神の采配に委ねられることになり、ジェラールとリシアールの決闘が始まる。 ジェラールはリシアールを倒して領地を回復し、結婚する。

§ 剣に関する挿話


 ジェラールは、最後にベルギーのニヴェルを去り、川上の城にやってくるが、 のちにここはヴェルジーと判明する。そこは、二里〔リュウ〕の城壁に囲まれて、 抜き身の剣を持った二人の男が、二つの道を行き交い、城の橋を警護していた。 四人の徒歩が現れ、三人は槍を、四人目は斧を担いでいた。 ジェラールは、とりあえず宿泊を請うことにした。 しかしあまり期待はするな、と忠告される。当地は、人々が死におびえながら暮らしており、 下町は荒れ放題で、麦の収穫も三年もないという。(p.79).  城の本丸塔(ドンジョン)に通されたが、これはディジョン (Dygon)に並んで 立派なものだった。しかし、あてがわれた宿は、粗末なものだった。人々の衣服はぼろぼろで、 誰も宝石や、サミートやサンダルcendal(p.80-1)などの豪華な布を身につけていなかった。

 ジェラールは、気品ありそうな乙女と話をする。 じつは彼女こそが、しがなく当地のヴェルジー城を継いでいる女城主だった。 のちにその名はエグリーヌ Aigline(p.108)と明かされる。 乙女は、城にも蓄えた食糧も数えるほどしかないことを伝える。 それより何より、町を恐怖に陥れている醜く恐ろしい宿敵がおり、 あくる日にまた襲ってくるという。 (à demain l'assaut / D'une gent molt laide et molt orde p.82) そいつは、城砦を何度も襲い、すでに父や三兄弟が殺された、というのだ。

 聞き捨てならないジェラールは、自分がその敵と対決すると志願する。 翌日、ジェラールは武具を調達されるが、それらはみな美しく高価な代物だった(p.88-): 黄金飾りの縞のアクトンaqueton(鎧下の胴着)や、 アレクサンドル大王(Alis)の所持品だった三重の鎖帷子、 そしてクイラスcuirie(革の胴鎧)の上には、 タラス Talas の母親のスコットランド人ランセ Rainse がこしらえたコートを羽織った。 兜はシャルルマーニュのものだった。また、その胸に佩かされた刃も、それ以上のものはないという 極上品だった。試せばそれははっきりするという。

 ここで、ジェラールに与えられた剣についての由緒の物語が挿入される:

{p.89}
Li rois de Budas la cité
Ot .j. neveu jouene tousel,
1780 Molt i avoit biel damoisel;
{p.90}La terre tint de Salemine ;
Mais molt ot en lui grant haïne
Ses oncles, qui volsist sans faille
Qu'il fust en auchune bataille
1785 Occis, puis si aroit sa terre.
Par trahison le fist requerre
.J. jour d'une bataille faire
Encontre Esclamor de Baudaire.
D'unes fauses armes l'arma
1790 Li rois, ki molt petit l'ama;
D'un hauberc molt menu maillié
D'estain trop bien apparillié.
Ses hiaumes fu de plonc forgiés;
Mais il estoit par lius vergiés;
1795 De bendes d'or molt richement.
S'espée, se l'escris ne ment,
Avoit crois d'or et puing d'argent,
Et fuere d'orfrois bel et gent ;
Mais li brans fu de plonc burnis.
1800 Tout ensi faitement garnis
Est montés el cheval isniel,
Puis l'amainnent en .j. islel
{p.91}Où cil Esclamor l'atendoit,
Qui combatre à lui se devoit.
1805 Des lanches au premier joustèrent,
Et si durement se hurtèrent
C'andoi se porterent à terre;
Sus salent, si se vont requerre.
Li niès le roi l'espée a traite,
1810 Seure li cort à la retraite;
S'a s'espée par mi brisie
Que li rois li ot tant prisie,
Et Esclamors sore li court;
Si a l'enfant tenu si court
1815 Que partout là où il l'ataint
En trait le sanc, ensi le taint.
L'enfès voit bien k'il fu traïs,
De la paour fu esbahis.
En la rivière l'enfès fuit,
1820 Ne set aillours avoir refuit ;
Por pierres prendre s'i aploie
Tant c'à la destre main s'apoie
Au heu d'une espée d'achier.
L'enfès le sache au redrechier
1825 De la rivière, où ot esté
Plus de .lx. et .j. esté.
L'enfès estoit legiers et fors;
De la rivière sailli fors,
{p.92}A .ij. piés encontremont saut ;
1830 A Esclamor vient, si l'asaut;
Donné li a si grant colée
Que très le chief li est coulée
{p.93} L'espée de si en la terre : (v.1832)
Por cel cop ot non Fine-Guerre
L'espée i ; or l'a Gérars au flanc.
Puis amainnent son cheval blanc;
—Michel 編
Roman de la violette,
p.89-93 (1778-1836行)
{p.89}
The King of the city of [Bagdad]
had a young nephew, a youngster.
1780 A very handsome gent was he;
Who held the [Greek Isle of Salamis];
But [the king] regarded him with hatred
His uncles unmistakably wanted him
To be involved in some battle
1785 and be killed, to claim kingship over his land.
Trecherously [the king] sent him
one day to battle against
Esclamor de Baudaire [Bagdad].
He equipped him with fake arms,
1790 The king who loved him little;
A hauberk with fine links
of tin, very craftily made.
His helms were made from lead,
But it was banded here and there
1795 With very rich stripes of gold.
His sword did not reveal the slightest fault,
A gold crossguard and Silver hilt it had,
And orfreyed pretty and nice;
But the balde was polished lead.
1800 Thus he was outfitted totally,
And mounted a swift horse,
Then went to a little isle,
Where Esclamor awaited, To do combat against him.
1805 The lances were jousted at first,
And they struck so hard,
They threw each other to ground,
Dashing forth [as warranted?].
The king's nephew plied his sword,
1810 Upon the body on reencounter [?]
And his sword broke in the middle,
The one which the king praised highly to him,
And Esclamors rushed upon him;
As the childe held such a short [piece],
1815 That wherever he could reach,
He drew blood and dyed him [red]
The childe knew well he was betrayed,
The fear made him cringe.
The childe went off to the river,
1820 With nowhere else to flee;
To gather rocks to use,
Then his right hand pressed
Upon the hilt of a sword of steel.
The childe reaches for it to recover it,
1825 From the river where it has been,
For more than forty-one summers.
The child feels fleet and strong;
From the river he sallies forth,
Soaring two feet in the air ;
1830 Comes upon Esclamor with such an attack;
Gave him such a great neck-blow
That the head gushed profusely,
The sword of his [found?] in the ground,
Was named Fine-Guerre for that blow.
That was the sword Gérard had at his side,
An so he led his white horse;
—tr. mine

 これこそが、ジェラールが脇に佩いた剣であった。 ヴェルジー城に敵が現れた。首魁は名をガルラン Galerans といい、ゴルジェラン Gorgerans という一団を 指揮していた。  戦闘でジェラールは何度かうわてを取るが、どうしても降参して助命を請わないので、 ついに剣の一撃のもとに、頭を切り割った。手下どもは、みるまに降参した。

  Michel 編では、後の冒険の挿絵 (p.144の後)に、 白馬にまたがり剣を持つジェラールの図が見られる。
*1 ページ番号はMichel編による。当サイトのメインストーリーの要約にあたっては、 Foreign Quart. Review XXXIII, (April 1836), pp. 52- にある英語文での本筋紹介や、François Victor Hugo, Œuvres complètes de W. Shakespeare, p.8- Tome V による本筋要約を使用した。

*2


Sources:

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