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ビターファー Bitterfer 【武器:剣】 【英国ロマンス:ホーン王】

[所持者]
ホーン Horn (son of Haþeolf) (Auchinleck 写本)*1, Horn (son of Murry) (Cambridge Gg.4.27.2 写本)*2 [中期英語]; Horn (アングロ=ノルマン詩 Horn et Rimenhild)*3 [古仏/アングロ=フランス語];

[剣2振り]
ビターファー Bitterfer (Auchinleck 写本 403行) [中期英語];
ホーンが、想い合う王女リムネルド Rimneld より贈られた剣。それはまさしく「剣の王」であり、名剣⇒ミーミングとひけをとらなかった、それもそのはず、刀匠ウェーランド Weland が寸分かわらぬ同じ作柄で鍛えあげた剣であったのだ。

ブラウェイン(ブラヴェイン); Blauain (Auchinleck 写本 804行) [中期英語];
ホーンが援軍の将としてアイルランド遠征し、戦って斃した仇敵マラキン王 Malakin から奪還した剣。その剣の正当な所有者は、そのときホーンが仕えていたウェールズのエリダン王Elidan だったが、エリダンの息子で援軍を受けたアイルランドのフィンラク王が、感謝の礼として、ホーンの命がつづくかぎりその所有をゆるした。

[指輪]
リムニルドの指輪 «(Rimnild's) ring» (Auchinleck 写本 568行), «ring of gold» (   "   955行) [中期英語];
リメンヒルドの黄金の指輪 «(Rymenhild's) gold ring» (Cambridge Gg.4.27.2 写本 567) [中期英語];
1) 《オーヒンレック写本》のバージョンでは、リムニルド王女が、これぞと心に決めた相手であるホーンに与えた節操の指輪である。それはホーンが国王の寵を失い、追放される憂き目に逢う前に渡されたものであった。指輪の宝石が色あせたならば、それはホーンが心変わりしてリムニルド姫をいとしく想わなくなったことを意味する。 そして指輪の宝石が赤く変わった時は、姫が純潔を守りとおすことができず、ホーンへの操を立てることがかなわなくなった危機を意味するのである。
 追放されたホーンが、ウェールズの王の麾下において、アイルランドで戦勝したとき、宝石が変色しはじめ、ホーンは急ぎ英国に戻ったのである。帰参するとあわやリムニルドがモギング王 Moging/Muging と挙式をするところであった。ホーンは、乞食に扮装して宴に紛れ込み、しきたりだといってリムニルド手ずから酒肉を供させるのだが、その変わり果てようになかな自分だと気づいてくれないので、角杯の中に二人の間の約束事のこめられた黄金の指輪を投じて姫にヒントを与えたのである。

2) 異本では設定がやや異なり、リメンヒルド姫がホーンに渡した不死身の指輪となっている。姫が、早くこの恋わずらいを治してほしいと結婚を迫るのだが、ホーンはそれよりもまず野にくだり遍歴して自分の力量を試さなくてはならないようなことを言うので、この豪奢に細工された黄金の指輪をあたえた。そこには「若きリメンヒルド」の文字が刻銘されており、その文字をみつめながら彼女のことを思いつめれば、戦で受けるいかなる攻撃からも彼の身を守ってくれるという。姫はホーンの義兄弟であるアスルフ Athulf にも同様の指輪を贈った。 

[角笛]
horn ..michel & vnride.. al yuore is the bon.. Sett wið mani a riche ston 「大きく、かさばるような、総象牙で貴石のあまたちりばめられた角笛」 (Auchinleck 写本 386-行) [中期英語] ;

これもリムニルド姫からホーンへの贈り物で、狩猟の合図や、合戦の鬨の合図をあげるための角笛。 姫自身が肌身につけていた帯、黄金の斜帯(ボールドリック)が、角笛をさげる紐としてつけてある。 斜帯なので、これを肩からたすきがけして角笛を携えるわけだ。これはすなわち、彼女とホーン〔*「ホーン」は英語で「角笛」のこと〕は、たとえ身がはなれても心はいつもいつもぴったりはなれず共にありますように、という願いがこめられた贈物であることにほかならない。

[馬]
a stede blac 「黒馬」 (Auchinleck 写本) [中期英語];
stede whit "「(アルメール王に贈られた)白馬」" (Cambridge Gg.4.27.2 写本 505),
«his gode fole,/Also blak so eny cole» (Cambridge 写本 593-4) 「まるで炭のごとく黒い良い仔馬」 [中期英語]
(2010.09.06 改正)
*1 「スコットランドのテキスト」とも称されるこの詩作『ホーン・チャイルド』(略称 HC) は、便宜上、中期詩『King Horn』(KH)と区別して扱われる。
《オーヒンレック Auchinleck 写本》(第317va-323vb葉)所収 『Horn Childe & Maiden Rimnild』 (スコットランド国立図書館サイト)。
J. Hall 編『King Horn』F. Michel 編アングロ=ノルマン詩にも併載。

*2 『ホーン王』King Horn (略称 KH)、別称 『キング・ホーンのジェスト』The Geste of Kyng Hornとも。 以下三点の手写本に残る
(L) = 《大英図書館 Harley 2252 写本》
(O) = 《オックスフォード大学ボドリアン図書館 Laud, Misc. 108 写本》
(C) = 《ケンブリッジ図書館 Gg. iv. 27. 2 写本》
Hall, Joseph, 編 King Horn: a Middle-English Romance (Oxford: Clarendon Press 1901) [books.google] に三つのテキストを 対応させて収録。

*2a Project Camelot/TEAMS のオンラインテキスト King Horn は、 《(C)本》を底本とした、Ronald B. Herzman ほか編、 Four romances of England : King Horn, Havelok the Dane, Bevis of Hampton, Athelston , (1999年)の既刊書をアレンジした用語解説付版である。

*2b French, Walter Hoyt and Charles Brockway Hale, Middle English Metrical Romances (New York: Russel & Russel 1964) も《(C)本》本だが、 中期英語綴りのまま残しており、行番も多少異なる。

[アングロノルマン版] 詩人トマ Thomas の作とも目されるアングロノルマン詩『ホーンとリムニルド』(略称 HR)は、 次の三写本に所収: C = 《ケンブリッジ図書館 Ff. 6. 17 写本》
O = 《オックスフォード大学ボドリアン図書館 Douce 132 写本》
H = 《大英図書館 Harley 527 写本》

*3 Brede, E. (gen. editor Stengel, Edmund, 1845-1935), Ausgaben und Abhandlungen aus dem Gebiete der Romanischen Philologie VIII, Marburg, 1883. [books.google] は、《C本》《O本》《H本》 を対応させて収録。

*3a Michel, Francisque, 1809-1887 編 Horn et Rimenhild. Recueil de ce qui reste des poëmes relatifs à leurs aventures composés en françois, en anglois, et en écossois dans le treizième, quatorzième, quinzième, et seizième siècles. (Paris: , Imprimé pour le Bannatyne Club par Maulde et Renou, 1845)
アングロノルマン原文は、『ギヨーム・ル・クレクの動物寓意譚』の写本として知られる オックスフォード大学 《O本》から; 「スコットランド語テキスト」と中英詩(L)

§ 『Horn Childe & Maiden Rimnild 』((Auchinleck 写本

 《オーヒンレック写本》版だと、 ホーンの父はハソルフ王 king Haþolf を名乗り、ハンバー川以北の英国(すなわちノーサンバーランド以北)を収める国王で、アーランドもしくはハーランド Arlaunde [Harlaund, Herlaund] という忠臣をかかえていた。(* 異本では、ホーンの父はマレー王 Murray で忠臣の名がハズウルフ Haþulf, Aþulf になっている。「最善の」ハズウルフと「最悪の」フィケニルド Fikenild がマレー王の股肱の腹心たちであった。26-30行).

 王国はデンマークの大軍の侵寇を受けるが、撃退に成功。上機嫌で、ブラックユー・モア「黒雌羊の荒野」 Blakeowe More で遊猟にふけり、ピカリング Pikering で宴をひらく。ところが、自分の王子と、同じ年頃の子供たちをひとところに集めると、その心苦しさを語りだす。ここには、さきの戦で父親を亡くした者も多いが、国の守護に殉ずることをいとわなかったそちらの父親たちのように、どうかホーン王子のためにつくしてはくれまいかと、頼んだのである。

 しかしホーンの父王は、次におしよせた攻撃の波、すなわちアイルランドの三人の王、ファーウェーレ、ウィンワルド、マルカン Ferwele, Winwald, Malkan が率いる軍によって命を奪われる(224行。異本ではサラセン人の大軍(42行))。 その機に乗じてノーサンバーランド伯爵 (241行) が、ホーンの父王の領土を略奪してしまう。 側近のアーランドの活躍で、ホーン王子は南イングランドに避難する。その地に君臨するのはホウラック王King Houlac [* 有名なハヴェロック Havelok the Dane の名の借用か] *1であった。

 ホウラック王は、忠臣ハーランド[アーランド]を、そのままホーンの師傅(教育係)に任命し、ホーンに礼儀作法や武芸諸般を仕込ませる (267行) (異本ではアルメール王の執事卿であるアセルブルス Aþelbrus, (229行-) に師傅を務めさせる)。そしてホーンはやがて十五歳の美少年に育ち、しかも英国中の騎士の誰をとっても、その技量に並ぶものなきほどと言われまでになる (289行〜)。
 ホウラック王には、美しい深窓の姫君がいたが、リムニルド姫[リムネルド姫] Rimnild [Rimneld] (var. Rymenhild 252行) はホーン若者のことを、たった評判を聞いただけなのに、恋をしてしまう。そしてその逢いたさのあまり、忠臣アーランドを(異本ではアセルブルスを)に命じて、ホーン若者をその閨房に連れてまいれといいつける。しかしその邂逅めぐりあわせがろくな結末にはならんだろう、と踏んだアーランドは、本人の身代わりにハゼロフ Haþerof を送り込んだ(323行)*2

 リムニルド姫は、招待したホーン若者のために豪奢なボードキン織*3を拡げ(332行)、鷹狩りの大鷹や手袋、三匹のグレーハウンド犬を贈ったりした。とはいうもの、この密会がおひらきになる前に、すでにすり替えがおこなわれたことに気づいているご様子であった。「そなたの名は存ぜぬが、犬三匹はそちのものじゃ」とおっしゃり、明日は本物のホーンを連れて参るように、とお言いつけになった*4

 翌日、姫は本物のホーンを接待し、贈答品の数々を用意して待ちうけていた。まず、馬に着せる羽織ものの工芸品 (queyntise [cointise] of palle)。そして大きくがさばる象牙の角笛 horn of ivory 。角笛には宝石がちりばめられ、携帯用に金張りの斜帯 gold-laid baldric (タスキ掛けする帯)が付いていた。斜帯は姫みずからが肌身にした品物であり(385行〜)、つまりこれは「彼女がつねにホーン(「角笛」のことをホーンという)と共にあらんことを」と願う心をこめた贈り物であったのだ。そして、彼女は輪から吊るされた見事な剣をかかえてきたが、(397行〜)その剣は、次のような由来のものであった:

400 ‘It is þe make of Miming,
Of al swerdes it is king
& Weland it wrouȝtt.
Bitterfer þe swerd hiȝtt,
Better swerd bar neuer kniȝtt
Horn Childe & Maiden Rimnild, 400行-
400 「そはミーミングと同じこしらえの剣、
すべての剣の王たる剣にて、
ウェランドが造りしもの、
[その名を]ビターファーと称えし、
いかなる騎士もこれにまさる剣を持つまじ。

 ホーンとほんの過ごした一時いっときで、リムニルドは「恋の傷」を患い、ホーンが騎士に昇進を果たしたならば「彼女の処女を褒美に」与える Hir maidenhod to medeと約束する。
 騎士叙任式は十四日たたないうちに行われるが、二人の愛が結ばれる間もなく、トーナメント(模擬試合)が開催される*5。ホーンが一等を受賞すると、王は、宮廷のなかからふさわしい妻を選んではなどと水を向けるが、リムニルドはもちろん、自分以外にホーンの伴侶(leman)にふさわしい乙女はいるものかと自負するのである。
 この後、ホーンの同志たち(六人、それぞれの名も明かされている)はフランスやブルターニュ公国などに仕官してゆく。ただし、性根が不忠なウィガードとウィケル兄弟 Wigard and Wikel*6は国に残っており、妄言 (lesinges)でホーンを陥れる。ある日、ホーンは病にかかり、血抜き(中世ヨーロッパの典型的な医療)をおこないに帰宅したが、兄弟はホーンがリムニルド姫を血が出るまで殴りつけ、陵辱しようとしたが、すんでのところで姫が逃げた、と嘘の報告をした。王はこれを鵜呑みにしてしまう。

 ホーンがリムニルドに会いに行くと、姫はベッドに横たわり、鼻や口から血を流していた。いかがなされたと案じるホーンだが、姫はむしろ讒言によって国外追放(flemed)されそうなホーンの身を心配していた。リムニルドには、未来を予見する能力が備わっていたようであり、自分の行く先について、七年間の間は貞操をたもつことができるけれども、それが過ぎたら皇帝が求婚にやってきます、その権力に抵抗することはとてもかなわないでしょう、と告げる。さらには、明日、王様はノロジカの狩りを終えたら、お考えしていることを発表し、食卓から(つまり王臣としての列席から)消え去れとおっしゃいますでしょうと、予言する。じじつ、そのとおりとなり、二度とその顔を見せたなら、野生馬に引かせて四つ裂きにし、絞首台に吊るし上げる、と脅す(563-4行)。

 ホーンがリムニルドの元に参ると、姫は別れしなにある指輪 (566行)を贈る。 その能力については、次のように説明されている:

‘Loke þou forsake it for no þing,
It schal ben our tokening,
570 Þe ston it is wel trewe.
When þe ston wexeþ wan,
Þan chaungeþ þe þouȝtt of þi leman,
Take þan a newe;
When þe ston wexeþ rede,
575 Þan haue y lorn mi maidenhed
Oȝtaines þe vntrewe.’
Horn Childe & Maiden Rimnild, 568行-
「何があっても、これを打棄うっちやってはなりませぬ、
これは私たちのあいだの合言葉。
570 その宝石は[愛の心に]忠実です。
宝石が色薄くなったなら、
あなたが妻[の私に]心変わりしたのです、
新しい妻をお迎え下さい。
宝石が赤く変わったなら、
575 私の処女は失われたと[お思いください]、
貴方への誠を立てられずに。

 国を追われたホーンは偽名を使い、グッドバウンドGodebounde (602行 * 異本ではカットバード Cutberd) と称してウェールズにいき (*異本ではアイルランド)、エリダン王 Elidan (* 異本サーストン王 Thurston)に庇護を求めた。
 ホーンはまず騎士を打ち負かしてエリダン王が近々七日間の模擬試合を開くという情報を得る。もしそれに耐えられたらば、八日目に拝謁がかなうだろうという。ホーンはスノードンの王を相手取り(662行)八日目に槍試合で勝利を得る。そして年間1000ポンドの給金で雇われることとなった。

 物語のとぎれる間もなく、アイルランドから使者がやってくる。当地アイルランドのわが王が侵略にあっておりまする、援軍をなにとぞ、との要請だった。危機にさらされているフィンラク王は、じつのところエリダン王の息子だった(父子関係については 747-9行で明言)。
 新鋭のホーンはこの使命をおびて、さきがけ隊の将としてアイルランドに遠征。ヨールキル ȝolkil という港につくが、これはフィンラクの宮廷近くであった。

 フィンラクの国境を侵した敵王のひとりはマルカン Malkan と言った。つまり、ホーンの父親の領土を侵して亡き者にしたアイルランドの三王のひとりマラキン王[異綴り]であったのだ。
 さて決戦の火ぶたが切られる前、ウェールズの使者は、ホーンの武勲を語り上げ、フィンラク王を勇気付ける。しかしマルカン王の軍事力は強大で (732行)アイルランドでも楯突くものはフィンラクをおいてほかいなかったのだ。マルカンは、「戦うならば死、居残れば虜囚だ。とくと逃げ去るがよかろう」とほざく(742行)。しかし開戦の日取りは三週間後と決定された。しかし暴風や荒波で、エリダン王から派遣される援軍本体は日に間に合わない。動揺したフィンラク王は、逃亡も考えるが、ホーンや王子らは、戦意満々である。ここで写本に欠落があるのだが、結果としてホーンはマラキン王をみごと討ち取り仇討ちを果たす*7。そのとき奪還したのが名剣ブラヴェイン Blauain (804行)であった。この剣は、もともとエリダン王の所有していたものである。しかしこの手柄に免じて、命ある限りはこの剣を持つことをフィンラク王より赦されるのである。

 ホーンもフィンラク王もその王子らも、さきの戦いで傷を負った。その傷を介抱したのは、王女アキュラ Acula であった(790-794行)が、マラキンの旧国が領地としてホーンに与えられると、王女はホーンへの恋心を打ち明ける。が、ホーンは自分が何を得てもそれは、愛するリムニルドのためにやっているのだ、と言う。そのとき、指輪の色に変化がある。イングランドを去ってから七年の月日が経っていたのである (830-840行)*8

 ホーンはすぐさまイングランドに向かって航海する。馬を走らせながら、たまたま出くわした乞食のなりをした男を無礼に呼び止めて事情を聞きだそうとする。ぼろを身にまとった男は、礼儀ただしく「そこの良きお方(グッド・マン)」と挨拶されなかったことに憤慨するが、ともかく身の上話やら世情やらを語り始める。 自分はいっときと休まずホーンと言う男の消息を探したずねてまいったが、衣服が裂けてぼろぼろなのはそのためだ。そて本日はモギング王 Moging がリムニルド姫と婚儀を挙げるだという。乞食まがいの男の正体は、もと同士のウィアード Wiard であったのだ。ホーンは友に自分の素性を明かし、ウィアードの粗末な服("poor weed ")をまとい、宮廷に探りを入れることにする。そして友には部隊をひきいて林間に待機せよと指示した。

 乞食の身なりをしたホーンは、タンブルやトランペットの華やかな演奏を耳にする。たまたま馬の馬具に手をかけたところ、ウィカードに殴打される(これは裏切者のウィガードのことで、忠義者のウィアードではない)。部下の狼藉があんまりなので、王は面目ない、欲しい物をなにかとらす、と言う。しかしホーンが、ではリムニルド様を頂きたいなどというもので、王は激怒する。ホーンはなにやら謎々めいた言葉を吐き、自分の七年の待望についてを暗示する。(傍には物狂いのわめきに聞こえるのだが)。そして今度は別の褒美を所望する:自分じつはは六十人の乞食を束ねる長であるが、者らも宮廷に招いて鳥肉やハムをふるまってほしい、と(937-行)。王はかなえてやることにする。

 饗宴では、乞食が古来よりの風習などと称して、花嫁が最初の肉料理を供しなくてはならないという。ここでお互い顔を突き合わせることになるのだが、それでも姫は乞食が変装したホーンであると看破することができない。ホーンは、リムニルドに言葉で色々ヒントを与える。かの模擬大会で優勝した騎士のことをお忘れでないことを公然と示してくださりませんか、などと言うのである。ついに、彼女がワインで満たした角杯をもってくると、もしホーンへの気持ちがまだおありならば、ホーン(角杯)から飲んでそれを証明してください、と言う。乞食はワインを飲み干した角杯に、彼女から贈られた合言葉の金指輪を落とすのである。彼女はやっと、ホーンが間近にいることを悟る。ハゼロフ [ホーンの義兄弟]を呼び寄せ、ペリウィンクル(ツルニチソウ)やアイビー(ツタ)など力を増幅する薬草を菜園から摘んでくるように命じる (1012-4行)。ホーンが王女を連れ逃げる作戦となり、ハゼロフはホーンとの連絡係りとして送られる。ハゼロフは、二人の裏切者の着ている刺繍の意匠を説明(ウィカードは雪のような白地にカラスのような黒い鳥が絹でかたどられる。ウィケルは黄色と緑で、あいだにゆり紋章がある)。食事が終わり、来客が旗や槍を持って甲冑姿で馬を巡らせると、ホーンや配下の百人の騎士がいっせいに襲いかかり、模擬試合のように戦った。ホーンは剣を振り下ろし、ウィガードの首を刎ね、ウィゲルの両目を飛び出させた (1187-9行)。

 ホーンは、騙されていたホウラック王とも和解し、祝福されて王女リムニルドとめでたく結婚する。しかし、父の領地を接収したノーサンバーランドのソーブランド Þorbrond 伯爵とのけりがまだ付いていない。ホーンは、... というところで写本が切れる。(* 異本では、讒臣フィケンヒルドを手打ちにせず生かしておく―それがのちに仇となるだが。ホーンはいったん妻の身柄を国許にあずけ、自分の母親の郷国であるサッドデーネを征服しに行く。征服を遂げ、母とも再会し、アスウルフの父ともめぐり合う。しかしホーンの留守にフィケンヒルドは牙をむき、強引にリメンヒルドを妻にしようとする。しかし冠をいただいた頭ごと、帰参したホーンにきりおとされてしまう。















*1 (異本では、ホーンとその仲間たちはサラセン人たちに捕獲されるが、少年らの美貌ゆえに殺戮することをためらい、舟に乗せてどこぞなりと海のはてに追放する。陸にたどり着いたホーンは、自分の生まれ故郷が サッドデーネ Suddene であると明かす[* 場所は不明。マン島だとか諸説あり。] ホーンは、風と潮のおもむくままに流される船に語りかけ、もしサッドデーネを見つけたら、母親のゴッドヒルド Godhild に自分の無事を伝えてくれと言う。ホーンがたどり着いた地は、アルメール王 King Almair が収めるウェスターネス Westernesse (155-7行)で、これは現今のリバープール市ちかくの Wirral 半島のこととされている。脱線だが、トールキンの『指輪物語』の世界にも Westnesse の地名が使われている(「西方国」と訳))。

*2 (異本ではアセルブルスがホーンの身代わりに送るのはアスウルフAthulf (289行)/Aþulf (297行等)であるが、アセルブルスがホーンの"兄弟"であるというのは言葉のあやで、じっさいは「義兄弟」である。のちにホーンの実父が物語に登場する。)

*3 baudekin, baudekyn 「金刺繍の入った織物の一種で、名はバグダッドに由来する」異本では bedde)

*4 (* 異本でも姫は最初の密会で替え玉に騙されるが、姫が愛の告白をしはじめたところをアスウルフが制して、義兄弟ホーンは、自分などおよびもしない立派な方ですと告げる。辱めを受けた姫は大そうおかんむりで、アセルブルスは絞首刑だわ、などとわめく始末。しかし執事卿は、こんな密会が王のお耳に入ったら事ですぞ、と弁で切り抜ける。姫は、ホーンを盾持ち(騎士見習い)の格好で明日よこすように、と言いつける。こちらのバージョンでは、この後の密会で姫はホーンに名剣を贈っていない(ただし身を守る魔法の指輪はこの時期に与えているが)。彼女が結婚をせまるのを、ホーンが自分はまだ一人前の騎士の資格する無いので釣り合いがとれませんと固辞し、それならばと姫が王にかけあって、とんとん拍子に騎士叙任式となり、王から剣を佩刀され、足に乗馬の滑車をつけてもらい、白馬を賜る。)

*5 (* I異本では、ホーンが結婚を先送りして、武者修行に出たいというので、リメンヒルドが不死身の指輪を贈る:
‘Tak nu her this gold ring:
God him is the dubbing;
Ther is upon the ringe
570 Igrave "Rymenhild the yonge":
Ther nis non betere anonder sunne
That eni man of telle cunne.
For my luve thu hit were
And on thi finger thu him bere.
575 The stones beoth of suche grace
That thu ne schalt in none place
Of none duntes beon ofdrad,
Ne on bataille beon amad,
Ef thu loke theran
580 And thenke upon thi lemman.
King Horn, ll.567- [ll.564 in French & Hale]
「この金の指輪をお持ちになって。
その装飾はすばらしく、
指輪には
「若きリメンヒルド」と刻んであります:
お天道様の下、これにまさるというものは、
何人が語れども、ございません。
私の愛に免じて、
これを指に着けてくださいまし、
その宝石の恩恵というのはですね、
いずこにいらっしゃっても、
戦いの場において、
攻撃に撃ちこまれることを恐れるずに済むのです―
ただ、この指輪を見つめながら、
妻である私を想ってくださりさえすれば。

*6 (* 異本では、裏切者はフィケンヒルド Fikenhild という人物。サラセン軍に単独で戦勝したホーンの成功をねたみ、ホーンが王を亡き者にしてリメンヒルド姫を妻にする目論見だと耳打ちする 691行-)









































*7 (* 異本では、ホーンはサーストン王の治めるアイルランドを守るべく、サラセン人の勇者である巨人と一騎打ちする。戦いのさなか、巨人は、こんな激しい打ち込みは、かつてホーンの父マレー王を殺したとき以来、味わったことがない、とほざく。父の敵と知ってホーンは激怒するが、抜刀しながらも指輪を見つめて姫を思い浮かべるまじないを忘れずに挑みかかり、巨人の心臓を衝く)

*8 (* 異本では、サーストン王には跡継ぎが無いので、レイニルド王女 Reynild (911行) を娶って王位を継いでもらうのが望みだと打ち明ける。しかしホーンは、リメンヒルドがレイネズ[英国北西のランカシャー州ファーネス?]のモディ王 King Modi of Reynes というホーンの敵に結婚を迫られていることをリメンヒルドの侍従より聞き、その結婚の執行を阻むべく、急ぎ帰参のしたくをする。そしてサーストン王にも兵力の応援をたのみ、また、レイニルド王女に見合う同志アスウルフを連れてくると約束する。)

§ アングロ=ノルマン詩 Horn et Rimenhild

xxx
*1 Michel, Francisque, 1809-1887 ed. Horn et Rimenhild. Recueil de ce qui reste des poëmes relatifs. . etc.(Paris: Bannatyne Club / Maulde et Renou, 1845)


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